不動産オーナー

所得税対策との並行
estate_image 不動産オーナーの方は高額な所得税で苦しんでおられることが多いです。所得税と相続税は、密接な関係にあり両方を考慮しながら対策を立てる必要があります。
 所得税対策を熱心にした結果、「所得税は減ったが相続税の負担は増大した」ということもあります。

 一般に、高齢の方は所得税対策よりも相続税対策を重視し、若い方は相続税対策よりも所得税対策を重視したほうが有利だとは言われていますが、対策によって所得税および相続税がどのくらい減るのかをキチンとシュミレーションして判断する必要があります。

アパート・マンションの老朽化

 地主の相続税対策としてアパート・マンションの建設が有効とされていました。現金より不動産のほうが相続税評価額が低くなり、アパート・マンションを賃貸すると所有者の利用価値が落ちるので、さらに相続税評価額が低くなります。

 加えて、アパートやマンションからは賃貸収入が上がりますので納税資金の準備もできるというのが、相続対策として有効な理由です。

 しかしながら、アパートやマンションは実物資産ですので経年劣化が避けられず、定期的な修繕のコストが発生するうえに、店子の出入りに伴っても多額の修繕費が必要となります。修繕費などで資金繰りに苦しんでいる不動産オーナーは多くおられます。経営を見直すとともに、保険の活用なども考慮しつつ物件の老朽化に伴う修繕資金の準備も進めましょう。

資産管理会社による節税
 アパートやマンションなどの賃貸不動産を個人で所有していると、定期的な賃貸収入によって将来の相続財産が増えてしまい相続税負担が増える可能性があります。

 不動産賃貸業を個人から法人へ移行すれば、税対策として有効な場合があります。定期的な賃貸収入を法人へ回せば法人の財産は増えますが、相続財産としてはその法人の株式(非上場株式)となるため個人で現金として保有しているよりも相続税評価額が低くなります。

 また、法人から家族へ給料を支払えば給与所得控除が利用できるほか、不動産の賃貸収入を分散することも可能となり、所得税の超過累進税率の効きを弱めることによる節税にもなります。

代償分割資金
 不動産オーナーの場合、定期的な賃貸収入によって納税資金をカバーできることも多い一方、将来の相続財産が賃貸不動産に偏るため、遺産分割が難しくなることがあります。

 不動産を共有すると処分や管理などが煩雑となるため、物件ごとに所有者を定めたいのですが、分割が難しい場合には代償分割も有効です。賃貸用不動産は特定の人に相続させ、賃貸用不動産を取得しなかった人には賃貸用不動産を取得した人から代償金というお金を支払うことで財産分割を公平にするのです。

 相続税がいくらくらいなのか把握するとともに、預貯金などで賄えない場合には保険などを活用して代償分割資金の準備も進めましょう。

相続後の不動産の処分
 相続で取得した不動産を売却など処分する場合には注意が必要です。相続税申告の際に、税金が安くなる優遇規定(小規模宅地等の特例など)を利用している場合、一定の期間のあいだ不動産を所有していなければならない場合があるからです。

 このような場合に、無理に売却すれば多額の税金が発生することも考えられるので慎重な判断が必要です。

 また、不動産の売買には税に絡む問題が多くありますので、専門家に相談しながらすすめるようにしたいものです。

民事信託の活用
不動産の共有対策に
 不動産(賃貸物件)の共有を避けるというのは、相続対策のセオリーとしてよく知られたことです。共有にすると、共有している人全員の意見が一致しないと売却や大規模修繕なども行えなくなりトラブルの原因となります。お子様が亡くなって、お孫さんの世代になると共有を解消するのは非常に困難です。

そのような場合も、民事信託を利用することによって賃貸収入は平等に受け取りつつ、管理処分は最も判断能力の優れた一人に一任するといった柔軟な対応が可能となります。

※民事信託とは、信託銀行などが提供するサービスとしての信託(商事信託)とは異なる、財産管理の手法です。柔軟な財産管理が可能となるため、従来では解決の難しかった諸課題(相続・遺言・認知症・不動産の共有対策・事業承継etc)への対策として用いられています。

色々な場面での活用ができるのですが、一例として以下の様な高齢の不動産オーナーの相続税対策にも活用されます。

民事信託で土地活用
 相続対策として所有している土地に賃貸マンションや賃貸アパートなどを建設することは非常に有効なのですが、ご高齢の場合、開発計画が長期にわたると契約や交渉の継続が難しくなるというのがネックです。(認知症を発症するとそのような契約もできません)

 このような不安から、計画を進められないという場合にも、民事信託を利用すれば解決できます。民事信託を利用することにより、信託契約にしたがって契約や交渉が進められるため、万が一、計画の途中で入院したり判断能力が衰えたとしても、開発計画をすすめることが出来ます。