対象者別相続ー共通事項

財産を守るために
 将来の相続に際し、財産を次世代に残していくために一番の問題となるのは相続税です。なぜならば、日本の相続税は諸外国に比して極めて高負担だからです。
 日本のように相続税の負担が極めて大きいと、資産の運用よりも税金をうまくコントロールすることを考えないと次世代に財産を残していけません。(この税金をうまくコントロール出来ないひとが多いことが、「日本では3代続けて資産家であることは難しい」と言われる所以です)
 そこで、まずは相続税がいくら掛かるのかを把握(相続税の試算)し、次いで相続税が課税される財産の金額(相続税評価額)の引下げを行うことで、相続税をうまくコントロールしていきます。
 個人の所有する財産は年々変動するので、将来支払う相続税も変動します。ですから、定期的に資産⇒対策(相続税評価額の引下げなど)を行う必要があります。

相続税試算
 日本では相続税の負担が極めて大きいため、相続税をコントロールすることが財産を残していく一番の方法です。そのためには、一定の期間ごとに相続税の試算を行い、税額がどのくらいなのかを把握することが必要です。
 また、将来の相続人さんたちには相続財産がどのくらいあるのか、税額がどのくらいなのかを伝えておくことも必要です。
 財産がどのくらいかわからないと、「死んだ父親の財産はもっとあったはずだ!」と誤解して遺産分割の際に紛糾したり、わだかまりが出来たりします。税額も事前に把握できれば、突然の相続で悲しみに暮れていても、ある程度の算段は出来ます。
 日本では、亡くなられた方の財産や相続税額がどのくらいか分からないことによるトラブルが多く発生していますので、定期的に相続税額を試算することは事前対策だけでなく、トラブル防止にも有効です。

代償分割
 遺産分割の際に、「分けることが難しい財産」や「特定の人が引き継がなければならない財産」がある場合、あるいは「財産の評価額が偏っている場合」(自宅・農地・自社株・事業用資産・不動産など)には、特定の人の財産額が大きくなって、その人以外の財産額が小さくなってしまいます。
 代償分割では、「分けるのが困難な財産」などを取得した人が、他の人達にお金を支払うことで足りない部分を補填します。
 事前に相続税額の試算を行い、どの程度の資金が必要なのかを把握しておき、手元資金だけで対処できなさそうであれば生命保険などを利用して資金の準備をしておくと有効です。

納税資金
 相続税の納税は原則として、金銭で行わなければなりません。相続税を相続財産で支払う物納などは要件が厳しく、金融機関からお金を借りて支払ったほうが有利なことが多いので現実的にはあまり利用されていません。
 金融機関からお金を借りると利息がかかりますから、可能であれば事前に相続税の納税資金を準備しておきたいところです。やはり、生命保険などを活用して資金の準備をするのが有効です。
 また、一見すると手元資金が潤沢で納税資金に問題が無いような場合であっても、財産構成が換金の難しい財産に偏っていたりすると納税資金の問題が生じますので、「換金のしやすさ」も考慮する必要があります。

事前対策
 相続税の事前対策は様々な方法がありますが、現在は有効とされている方法でも、関連法令の改廃や家族の状況変化などで将来は有効とはいえない場合もあります。一つの方法に頼らず、幾つかの方法を並行的に実施しましょう。
 いずれの方法もメリットもあれば、デメリットも有りますので専門家と相談しながら、ご自身の状況に応じた方法を実行することが大切です。
①生前贈与
 相続税は死亡時に所有していた財産に課税されるため、死亡前に子供や孫に財産を譲っておけば相続税を軽減することが可能です。
②養子縁組
 養子縁組をすることで、相続税の基礎控除(相続税がかからない金額)を増やすことができるので、相続税の負担を軽減することが可能です。
③評価引下げ
 不動産や自社株式は、その利用状況など条件を整備すると評価引下げが可能となる場合があります。評価額を引き下げることにより相続税の負担を軽減することが可能です。
④資産の組み換え
 管理コストが高い、収益を生み出さない、にも関わらず相続税評価額は高いといった財産を、別の財産に組み換える(実勢時価と相続税評価額の乖離が大きい財産だと更に良い)と、相続税負担の引下げのみならず、効率的な資産運用や遺産分割もしやすくなります。