認知症・介護

認知症・介護
 厚生労働省の調査によると、高齢者の5人に1人が認知症及びその予備軍といわれています。
生活習慣などに気をつけて認知症を予防することも重要ですが、認知症を発症したり、介護が必要となった場合のために備えをしておくことで、本人だけでなく周りの家族の負担も大きく軽減されます。

介護費用
 介護が必要となった場合も、自宅で介護できるのか施設を利用しなければならないのかで負担が変わります。また、施設を利用する場合でも介護保険が利用できるのか否かでも負担が変わります。
 個々のケースで費用負担は変わりますが、施設を利用した場合の平均額は500万円〜800万円と見積もられており、預貯金だけで賄うのは厳しい場合には、民間の介護費用保険の活用も考慮したいところです。

(参考)
介護にかかる一時費用…平均900,000円
車いす…自走式40,000〜150,000円、電動式300,000〜500,000円
リフト(工事費別途)…据置式200,000〜500,000円、レール走行式500,000円以上
ポータブルトイレ…水洗式10,000〜40,000円、シャワー式100,000〜250,000円
特殊寝台…150,000円〜500,000円
手すり…廊下、階段、浴室など10,000円以上
階段昇降機(工事費別途)…椅子式直線階段用500,000円以上

介護にかかる月額費用…ひと月あたり平均77,000円(介護保険の自己負担を含む)
生命保険文化センターの調査では、介護期間は5年弱
→一時金も含めて5,000,000円〜8,000,000円

※介護保険の適用を受ける施設…ひと月あたり平均100,000〜150,000円

※介護保険の適用がない施設(有料老人ホーム)
 …ひと月あたり平均200,000〜300,000円
(光熱費、管理費、食費、生活費、サービス料など) 
 …一時金は施設によって大きく異なる0〜100,000,000円
 (5,000,000円程度がボリュームゾーン)

認知症保険
 認知症に対する備えとして認知症保険も有効です。認知症と診断された場合に一時金を受け取り、身の回りのお世話や施設に入る際のお金として利用すれば金銭的負担が軽減されます
 介護期間が長期に渡る可能性もあるときは、一時金でなく年金タイプも選択の候補に上がります。

成年後見
 認知症あるいは加齢などで判断能力が衰えると、悪質商法や詐欺などのターゲットとして狙われやすくなってしまいます。悪質商法や詐欺などから身を守るために「成年後見制度」の利用を検討しましょう。
 とりわけ、現在は元気だけれども、この先に判断能力が衰えた時のために、自分の財産管理や介護などの生活面での希望について、あらかじめ準備しておく「任意後見」の制度は有効に活用したいものです。

遺言の作成(寄与分で揉めないために)
 認知症に対する直接的な備えではありませんが、遺言の作成も有効です。認知症や介護が必要となると、身の回りのお世話をしてくれる人が必要となります。例えば、家族の中でお世話をしてくれた子供とお世話をしなかった子供がいる場合には、お世話をした貢献度を財産分けに反映させるかどうか(寄与分といいます)で揉めることもあります。
 また、認知症になると判断能力が不十分と考えられ、遺言を作成しても無効になってしまいます。認知症の症状が出る前の元気なうちに遺言の作成を検討しましょう。

民事信託の活用
 認知症になると法律行為(契約の締結、遺産分割協議、贈与etc)ができなくなります。それを補う制度として成年後見制度(法定後見)がありますが、成年後見制度ではアパート経営などの相続税対策、子供や孫への資金援助、豪華な老人ホームへの入居などがほぼできなくなるという使い勝手の悪さがあります。
 そこで、認知症になる前の元気なうちに自分の希望に沿った民事信託を設計し契約を結んでおけば、先に述べた(アパート経営などの相続税対策、子供や孫への資金援助、豪華な老人ホームへの入居)ような柔軟な財産管理を行うことが可能となります。

※民事信託とは、信託銀行などが提供するサービスとしての信託(商事信託)とは異なる、財産管理の手法です。柔軟な財産管理が可能となるため、従来では解決の難しかった諸課題(相続・遺言・認知症・不動産の共有対策・事業承継etc)への対策として用いられています。